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伊勢はやはり時平と結ばれた。
当初こそ伊勢に未練がましい和歌も贈った。
近院での生活に慣れるに従い、これで良かったと仲平は思った。
姫の体はしだいにふっくらとしてきて、月のものも始まった。
元の美貌が戻っていないのが残念だと、気の利かない女房が言っても、仲平にとっては姫は誰よりも愛おしい。今でも仲平の手から食べたいと甘える。
姫はよく笑い、たどたどしく琴を弾いた。
仲平は横笛、姫は琴で合奏したが、間違えては二人で笑い転げた。
そんな凡庸で穏やかな日常に仲平は満足していた。
ある日、姫は意地悪な人に仲平には伊勢という人がいたと聞かされて驚き、震える声で伊勢とはどんな人かと尋ねた。
仲平は答えた。
「花よりも美しく、舞えば蝶。楽器を弾けば鳥が寄る。和歌を詠めば額田王の再来」
姫はワッと泣いた。仲平は姫の髪の毛を撫でて言った。
「しかし、姫ほど私を思ってくれる人ではない。気になさるな」
二年もして、姫は懐妊した。
仲平は赤子の首が座ったら、枇杷殿に姫と赤子を引き取ろうと言った。
「幸い私は岳父様の世話なしでやっていけそうだからね。あなたを枇杷殿で自分でお世話をしたい」
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