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誰もが入内と言い続け、姫の話は聞かない。
姫には入内は恐怖である。
幼心に、入内する日の美しい姉の様子を覚えていた。しかし、すぐに姉は亡くなった。
見知らぬ帝に女御としてお仕えするよりも、一度だけ見かけた、あの人。忘れられない、あの人ではないなら、死ぬ方がいい。
裳着を終えて、その次は入内と聞かされた姫は食を絶って死んでしまう決意をした。
念仏を唱え続ければ、極楽にも行けよう。
「姫はどなたに会いたいのです」
二の姫は乾いた唇で「にの、きみ」と北の御方に答えた。
北の御方の中で怒りがふつふつと湧き上がった。
どこの小僧が妃がねの姫に手を出したのか。
怒鳴りつけたいのを押さえると、自分でも気持ちの悪い猫なで声が出た。
「姫や。どちらの二の君です。父上は公達のご子息なら婿に取っても良いと私にお任せになりましたよ」
「本当ですか!」
姫は目をぐっと見開き、乾ききった唇で叫んだので、唇が切れた。姫にはその痛みも感じず、声がしゃがれていることにも気がつかなかった。
「入内しなくてもよろしいのですか!?」
これはまずいことになった。しかし、大姫に続いてこの姫にも先立たれることだけは避けたい。
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