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「あなたは一世源氏の大納言家の姫なのです。釣り合う相手なのですか」  姫はしゃがれた声で不気味に笑い出し、吐き出すように言った。 「釣り合うも合わないも。二の君が私に釣り合わないならば、母上も父上に釣り合いませんとも」  かわいそうに頭がおかしくなったのだろうか。  私の父は太政大臣でしたよ、と北の御方は言いたいところをぐっと堪えた。  臣下で大納言よりも高位の位は大臣だけだ。  河原の左大臣の二の君は大納言と年が離れないではないか。新しく右大臣になったのは故堀河の太政大臣の伯父に当たる人だ。我が父の従兄弟にあたる二の君はまだ存命だっただろうかと北の御方は思案した。  これは親王家か王家の二の君だろうか。 「そんなに身分の高い二の君はどちらにおられるのです」 「婿取ってくれるのですね」 「起きて食べてくれるの」 「二の君に食べさせていただくのでなければ嫌です」 「ならば、来ていただきましょう。その二の君のお手からなら食べてくれるのですね」 「婿取ってくれますか」 「ではおっしゃい。どちらの二の君ですか」 「母上、約束してくださいますか」 「約束しますよ」  姫は大きく息を吸って答えた。 「堀河の二の君、右衛門の佐さまです。母上の、弟君」  思いもよらぬ人が指し示されて、北の御方は驚いた。     
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