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 美しい二人の姫たちを見せびらかそうと、姫たちを遅れて到着させることにしていたのだが、うら若い異母妹の弘徽殿女御・温子の威厳に満ちた佇まいには負けることは認めざるを得ない。  姫たちが客人として到着した。立ったままお祖父さまにお別れを申しあげなさいという言いつけを、姫たちはよく守った。  その姫たちが入ってくるところも、出ていくところも全て見たわけではない。  翌朝、北の御方は三の姫を呼んでそっと聞いた。 「九条に行ったのを覚えていますか」 「はい」 「そのときに堀河の叔父君にお会いしましたか?」 「ええ、右衛門の督さまに」  右衛門の督は美貌で知られる、嫡男・時平である。 「他には?」 「佐さまにも」  時平のすぐ下の弟、堀河の二の君こと仲平は右衛門の佐である。 「どう思いましたか?」 「どうって、皆が美しいと言う右衛門の督さまですが、私は四の君の方がいいと思う」  うっとりとした様子で三の姫は答えた。  この子にまで弟の一人を婿取らねばならないのかもしれないと思うと、北の御方はクラクラしてきた。 「佐さまは姉上に何か言ったりしましたか?」 「覚えてません」  あの子は仲平を見たことがある。それだけは確かだ。  急ぎ、使者を九条か枇杷殿かにいるだろう、仲平のところに行かせた。
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