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「御用とは」
「この二の姫が、九条であなたをみかけました」
「はぁ」
「一目ぼれです」
「一目ぼれ」
仲平はおうむ返しに聞き返した。
「ええ。恋わずらいで食を絶ち、今にも死にそうになって、ようやく恋する相手が右衛門の佐さまだとわかりました」
仲平にとっては寝耳に水である。
「人の心があるならば、どうかこの娘に食べさせてやってください」
粥が運ばれて来た。
さあ、と仲平は御簾の中に引き入れられ、やせ細った娘に引き合わされた。
確かに、一度この娘は見かけてる。顔までは見ていないが近院の上の姫はそろそろ裳着かなと思った記憶はあった。こんなにやせ細っていたわけはない。
骨と皮だけになった姫の頬をつつっと涙が伝った。
姫が「本当に来てくださった」と言ったような気がした。
流されるように仲平は姫を助け起こし、抱きかかえた。匙で粥をすくって、昔乳母がしてくれたように、ふうと息を吹きかけてから姫の口に運んでやった。
「お食べなさい」
口に入れられて姫はむせた。
「最近重湯しか口にできなかったのですよ」と非難めいたことを滋子が言う。ならば、と上澄みをすくって口に入れてやると、姫は飲んだ。
「今度は飲めましたね」
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