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緑の楓の葉が太陽の光に青く眩しく映るころ、近院の大納言家にはひっきりなしに名医と呼ばれる人たちが呼ばれていた。
父の堀河の太政大臣の喪に服している北の御方の藤原滋子は、落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしていた。キュッキュと鶯張りの簀の子縁が鳴ったのに気づいて女房が声をかけた。
「御方さま」
「殿か」
喪中の人のけがれがうつらないように、室内には入らずに立って話をすることになっている。
太り気味の大納言・源能有は蔀越しに北の御方に対面した。
「医師はなんと」
大納言は再び頭を振った。
「食べないのが問題だと」
「加持も祈祷も効果がない。これは都を離れて山荘にでも連れていくべきなのでしょうか」
大姫同様に入内させるか、親王でも婿取りしようと育てられた二の姫は、ある日から物を食べなくなってしまった。ようやく口にできるのは、重湯だけである。
「痩せてしまってね。牛車に乗せて良いものやら」
夫妻は沈痛な面持ちで同時に下を向いた。
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