第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
空を見上げるとこれ以上ないほどの白く晴れた空が広がっていた。ただそれだけだった。 ―――――――――――――  「さぁ今日も仕事に行こうか」 こう一人で呟いたのも何度目だろうか、数えてもいないがほぼ毎日言っているはずだ。 そんなことを考えながら服を着替え、真っ白なトーストを食べ、真っ白な歯を磨き、白壁の会社に出かける。 何も変わらないくり返しの日々だ。 あいにくにも、今日は曇りだった。空一面が真っ白だ。 予報によると雨は降らないらしいが一応傘を持っていくとしよう。 会社に着いてから一つ気付いたことがある。 自分以外誰一人傘を持ってきてはいないのだ。 確かに曇りで雨は降らないとあの白い服を着た天気予報士が言っていた。 それでももしものことを想像するやつは自分以外にもいるだろう?堪らず仲がいい同僚になぜ傘を持ってこなかったかと聞いた。 すると同僚は 「なぜって?何を言っているんだい、こんなに空には雲一つない天気じゃないか」 と言った。 何が起きているんだ。 自分がおかしくなったのか? いいや、そんなはずは無い。 きっと回りが自分をからかって遊んでいるんだ。 そうに違いない。 そう思い走って外に出た。 外は"白"かった。 人、物、動物、植物 そして空 もう何が何だか分からなくなった。 きっと自分が最初から勘違いをしていたのだ。 ―――これが普通なんだ――― もう何年も前の話だ、世界が白に染まった。 いや他の色が"脱色"されたのかもしれない。 それは自分には分からない。 ただ一つ分かることは、 空を見上げるとこれ以上ないほどの白く晴れた空が広がっていた。 ただそれだけだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!