【2】発見

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 自分と他者の違いを意識することは、誰にでもあると思う。特に私は、それを敏感に感じてしまう子だった。  リラもネイも、ここでの生活を十分に楽しんでいる。陸の話をしても、夢中になるのはいつも私だけ。彼女たちは陸を眺めるのは好きだったが、「陸に行きたい」とは決して言わなかった。  今回だってそうだ。リラ、ネイ、ナモさんに母さん、群れのみんな。リラの「名付け」が終わったから、名前が無いのは私だけだ。それなのに、怖い。  みんなは名前をいただけることを喜んでいるのに、どうして私は喜べないんだろう。どうして私は、悩んでいるんだろう。  夜になるまで、私はひたすら泳ぎ続けた。空腹でも無いのにイワシやイカを追いかけ、ひたすら高く飛び上がった。勢い余ってナモさんの背中を飛び越えたら、他の子供も真似し始めたので急いで離れた。  今は誰とも話したくなかった。こうして泳ぎ続けていれば、何もかも水に流されて消えると信じたかった。  何度か母さんが話しかけてきたが、無視して通り過ぎた。誰かの声を聞くだけで、何かが壊れてしまう気がしたから。
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