【3】秘密

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 群れに帰った私は、母さんにこっぴどく叱られた。当然私が悪いのだが、その時の私には、罪悪感など全くなかった。  私しか知らないもの。それがあるだけで、なんだか心が晴れやかになった。さっきまでの不安は、すっかり消えていた。  明日が楽しみだ。「それ」を見に行くために、早く「名付け」を終わらせなくては。  恐ろしかったはずの「名付け」は、私にとっても嬉しいものに変わっていた。これで私も、みんなと同じになれた。もう何も怖くない。もう寝よう。明日の目覚めの日差しは、きっと今までで一番心地よいだろう。  こんなに幸せな気分になったのは初めてだ。この幸せがずっと続けばいいのに。  全く反省していないことに腹を立てている母さんの隣で、私は幸せな眠りについた。      夜が更けてきた。  私は眠れなかった。  岩穴に置いてきた「それ」がどうしても気になる。何度も見に行きたい衝動に駆られたが、その度に自分に言い聞かせた。  明日になれば、明日が来れば、全てが良くなる。あと少しだけ待てばいのだ。  少しだけ、少しだけ……  ……おや?  
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