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僅かに水の流れが変わった。何かが近づいてくる。そう感じた次の瞬間、群れが一斉に騒がしくなった。
親たちは自分の子供を側に寄せ、周囲を警戒する。サメ? それともシャチ?
母さんが私を見つめる。
「絶対に母さんから離れないで。いい? 」
今回ばかりは素直に頷く。私は母さんにぴったりと並んだ。
辺りは暗く、何も見えない。皆の出す「音」があちこちから聞こえてくる。
私も「音」を出す。しかし、特に変わったものは見つからない。
おかしい。サメやシャチのような大きい生き物なら、必ず「音」が当たるはずなのに。
「何か」の気配はどんどん近くなる。群れ全体に緊張が走る。
私は震えていた。先ほどまで忘れていた恐怖が、今になって帰ってきたようだ。
その時、前方の水が大きく揺らいだ。皆の視線が一気に集まる。
そこにいたのは、サメでは無かった。シャチでも無かった。
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