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最初にその姿を見たとき、私は純粋に綺麗だと思った。
体の横に一本づつ、長い胸鰭を持ち、体の下からは細長い尾鰭が生えている。頭のような丸いものもあるが、目や口は見当たらない。
不思議なことに、それは暗闇の中でも形がわかるほどの光を放っていた。暖かい春のような優しい光だ。全身は水のように揺らいでいて、透き通っていた。ちょうど胸のあたりに丸いものがあり、時々動いていた。
私を含めたほぼ全員が、それに見とれていたと思う。先ほどまでの恐怖や警戒心は消えていた。それ以上に、群れ全体が穏やかな雰囲気に変わっていた。
それは全く動く様子を見せないまま、ふわふわと浮かんでいた。どうやら危険なものではなさそうだ。皆はすっかり落ち着きを取り戻していた。ただ一匹、母さんを除いて。
母さんはそれを鋭い目で見つめたまま、じっとしていた。その目にいつもの優しさはない。
「ねえ、あれって何? 」
尋ねて見たが、返事はない。こんな母さんは初めてだ。何か知っているのだろうか?
「母さん、知ってるなら……」
教えてよ。そう言おうとした時、ついにそれは動き出した。
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