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「ん?……ここ、うちの会社の近くじゃん……」
国道を走り停まった場所は、自社ビルの目と鼻の先にあるオフィスビル。
「ここの1階なんだけどさ。着いてきて」
そう言われ、こちらを見ずに車を降りた。
一度も振り返らず、鍵を開け中に入っていく先輩の後を、私は訳もわからず付いていく。
室内は養生シートが貼られた空っぽな空間。
どうやらリフォーム途中の物件らしい。
「……ここは?」
「うちの支店。3店目の営業所だよ」
「・・・へぇ~……スゴイネ……」
・・・わ━━ぉ、先輩は遣り手だったのか・・・
こりゃお母さんイチオシの婿候補だったわけデスネ。そりゃあゴリ押しするゎ・・・
「・・・で?見せたい場所ってここ?」
「そ。すげぇだろ、俺」
「・・・」
どや顔する先輩が何を言いたいのか、さっぱりわからん。
「お前さぁ、」
とその時、私の頭に重みを感じた。
先輩の掌だ。
「どーせ『これで先輩とはもう会わないし、明日からまたコタとラブラブエブリディ♪』とか思ってたんだろ?」
スー・・・と泳がした視線を戻すかのように、よしよしと撫でる掌に力が加わっていくのは、私の気の所為でしょうか……?
ってか、その高い声色は私のつもりか?うっわぁぁぁ……その笑ってない笑顔は止めてくれ。怖いです・・・
「・・・『ラブラブエブリディ♪』って何ッスか。ドン引きッスよ……」
そもそもコタとはそんな仲じゃないし、そんなの私のキャラじゃないし。
それと、ガシガシ撫でるのも止めてくれ。若干痛いッス……
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