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「入るぞえ」
「母上!?」
「やはり匂うな…。若い女の匂いがする…。」
ディランが誤魔化そうとするが魔女は突如、鋭く長い爪で息子の首を絞め、自分よりも長身の息子を高々と持ち上げた。
「女じゃ…。若い女の気配がする…!ディラン!そなた、何処に隠したのじゃ!」
「ッ…!」
「ディラン!」
苦痛に顔を歪めるディランの姿に思わず衣装棚から飛び出したリディアを魔女がぎょろり、と大きな瞳を向けた。そして、真っ赤な唇を三日月のようにニッと笑みで歪め、
「人間の娘…!遂に、遂に見つけたぞ!」
女とは思えない程に腹の底から低い声にも似た呻き声を発し、魔女の身体からは黒い靄のようなものが放たれた。
「リディア!」
ディランの言葉を最後にリディアは意識を失った。
「う…、」
チャリ、と金属音の擦れる音に目を覚ました。気が付くと、リディアは真っ暗な部屋の中央で祭壇のような台の上に鎖で繋がれていた。
「な、何…!これ…、」
「おや。気が付いたかえ?」
「あなたは…、」
リディアを覗き込んだ人物はあの白い魔女だった。
「そなたは、今まで見たどんな娘よりも美しい…。白い花嫁になるにふさわしい…。わらわの…、次代の器を継ぐべき存在に…。」
魔女はリディアの意思など聞かなかった。召使いからグラスを受け取ると、それをゆっくりとリディアの身体に降り注いだ。
「きゃああああ!」
それは人間の生き血だった。その時、窓ガラスが割れる音がした。窓から入ってきたのは白い狼だった。扉も破壊され、魔女や手下の男達に襲い掛かる。
「チッ…!小賢しい!」
狼に気を取られた魔女の隙をついて、狼の中でも一番大きい狼がリディアに近づいた。狼は牙で鎖を噛み砕き、リディアを解放した。そのままリディアを背に乗せると軽やかに駆けて窓から飛び降りた。リディアは振り落とされないようにしっかりと狼の背に掴まった。
「おのれ…!ディラン!裏切り者が!」
魔女の咆哮を背にリディアと狼は古城を後にした。
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