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「ディラン!」
辿り着いた先は古城から離れた湖の畔だった。木の幹に凭れかかり、苦悩の表情を浮かべる彼の姿に駆け寄った。
「リディア…。無事だったか…。」
安堵の溜息を吐いて立ち上がろうとするが眩暈を起こしてふらつく彼をリディアは支えた。
「大丈夫?」
「平気だ…。少し…、力を使いすぎたせいで疲れがでただけだ。休めば治る…。」
「ディラン。私…、思い出したの。あの狼に私は昔、会ったことがあるのよね?」
「!?何故、それを…、」
小さい頃、私白い森に入ったことがあるの。動物の鳴き声が聞こえて気になって…、そしたら怪我をしている狼の子供がいたから手当てをしたの。その子の目には大きな三本の線が走った傷があったからよく覚えている。あの狼と同じ傷を持っていたの。」
リディアはそう言って、白い大きな狼を指さした。
「…思い出したのか。そうだ。あれは、俺の使役している狼だった。怪我の手当てをされて戻ってきて、それを施したのがお前だと知り、礼を言いたかったが、白い森の住人の俺がお前に近づける術はなかった。だから、お前と森で出会った時は驚いた。…俺はただ、あの時の恩に報いたかった。それだけだった。それなのに、危険な目に遭わせてしまった。」
「ディラン…。あなたはそれ以上のものを私にくれたわ。十分すぎる程に。」
「俺が?」
「あなたと出会って、その優しさに触れて…、愛しいという感情を知ることができた。あなたのおかげよ。」
「な…、嘘だ!」
「嘘じゃない。私はあなたをもっと知りたいわ。好きな事や嫌い物…、たくさん教えて欲しい。叶うなら…、ずっと一緒にいたい。」
「俺の正体は知ってるだろう?俺はあの白い魔女の息子で人食い族…。おぞましい化け物なんだ。そんな俺をあんたみたいな真っ白で清らかな人間に好かれる筈がない。」
「ディラン。」
リディアはディランの頬に手を添えると、そっと口づけた。
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