白い森

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昔、昔ある所に森に囲まれた村がありました。その村にはひとつだけ変わった風習がありました。それは、村を隔てた場所にある白い森と関係がありました。白い森と名付けられている通り、その森は木々が白く、一年中雪が降っているかのように白で覆われていたからです。けれど、どこか近寄りがたいものを感じさせる森であり、不穏な噂もありました。それは、白い森に入った人間は森の呪いを受け、森から二度と出られないというものでした。実際、その森に入った人間はおりますが森に入ってからその姿を見た者はいませんでした。そして、そのまま姿を消し、行方知れずになってしまったのです。白い森にはもう一つの噂がありました。白い森には魔女が住んでおり、その魔女によって呪われていると。そして、その魔女が白い森を支配しているのだと。そのため、村人たちは決して白い森には近寄らず子供達にも決して白い森には入らないように言いつけておりました。その村では親が子供を叱る時には悪いことをすると白い森に住む魔女に連れていかれてしまいますよ、と叱ることもある程でした。そんな怖ろしげな噂のある白い森の近くに一人の村娘が住んでいました。その村娘は村でも一番の器量良しでした。働き者で心優しい娘でしたが彼女の境遇は不幸なものでした。 母を早くに亡くした彼女は父親の再婚によって継母と妹ができましたが新しい継母と妹は娘を嫌い、虐げ、奴隷のようにこき使うようになりました。彼女に襤褸を着せ、食事も満足に与えず、時には暴力もふるいました。それでも、少女は忍耐強く、耐えていました。やがて、村には冬の時期がやってきました。この村では冬は極寒の寒さで冬を越すのは厳しいものでした。冬なので、作物も育たない為、食糧の確保はとても重要でした。けれど、村には飢饉や流行病が蔓延し、食糧不足であったため村は大変過酷な状況下にありました。そんなある日、いつもの様子で妹の気まぐれな我儘を口にしました。
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