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「ああ。力が…、力が漲っていく…。」
女はケタケタと狂ったように笑い出す。
「けれど、時間がない。わらわのこの身体も限界に近づいておる。次の満月までに器を見つけなければ…、わらわの器にふさわしい若く、美しい娘の身体を…、早く見つけなれば…、」
不意に魔女がゆっくりとリディアの方に目を向けようとした。が、それより早くに背後からリディアは何者かに口を塞がれた。そのまま木陰に身体を引き寄せられ、身を隠された。
「どうなさいました?」
「いや…。気のせいじゃな。若い女の気配がしたのじゃが。」
魔女はそう言い、興味をなくしたように視線を外した。
「器は揃うておるか?」
「ええ。いくつかの好捕を揃えています。」
「そうか。…では、品定めをしなければな。…わらわにふさわしい器を見つけ、新しい器を手に入れるのだ。…でなければ、我々一族の血は絶えてしまう。何としても…、我が一族を途絶えさせるわけにはいかぬのじゃ。」
ぞろぞろと魔女に続いて男達は去っていく。それを確認し、リディアの口を塞でいた何者かはその手を外した。
「あ、あの…、」
リディアは慌てて振り向いて声を掛ける。目の前には一人の青年が立っていた。銀色の長い髪を一つに結び、背が高く、見たこともない程に整った顔立ちの美青年だった。青と白を基調にした服を身に着け、腰に剣を提げている。
青年は中性的な容姿で一見、女性かと見間違えてしまいそうになる程の美貌だ。思わず見とれてしまうリディアに青年は不審そうに眉を顰めた。
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