白い森

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ディランはそう言い、リディアを森の入り口まで送ってくれた。何故か、先程の白い魔女や男達には出会わずに無事に辿り着けた。リディアは青年に何度も礼を言い、白い森を後にした。リディアは振り向くがもうそこには青年の姿はなかった。リディアが林檎を持って家に戻ると継母と妹は大層驚いた。それよりも、更に驚いたのは林檎を手にしてきたことだ。二人は林檎をリディアから取り上げると、それをリディアには一つもあげずに独占した。その林檎は今まで食べたことがない程に甘美で極上の味だった。妹は林檎を大層気に入り、林檎を手に入れた経緯を知りたがった。素直なリディアは理由を話した。白い森で一人の青年に出会い、その青年から林檎を分けてもらったことを。魔女やあの怪しげな集団の男達と青年が見せてくれた不思議な力の事実は伏せて。すると、妹はディランが偉丈夫な青年だと聞くと、目を輝かせた。そして、今度は自らが白い森に行くと言い出したのだ。さすがに継母は心配になり、止めたが聞く耳を持たない。そのまま妹は出て行ってしまった。が、その夜妹は帰ってこなかった。やがて、妹を捜しに継母も白い森に向かった。そして、継母も帰ってこなくなった。心配になったリディアはもう一度白い森に行った。もしかしたら、もう一度ディランに会えるかもしれないと期待して同じ場所に向かうがそこには誰もいなかった。落胆しながらも継母と妹を捜し続ける。やがて、森の奥には白い古城が見えてきた。リディアはそこに近づいた。 「また、失敗か…。一体、いつになれば器が見つかるのだ…。」 「もう時間がないというのに…。」 男達の話し声にリディアは不穏な物を感じ、その場を離れようとした。が、誤って彼女は地面に落ちていた枝を踏んでしまう。 「誰だ!?」 リディアは逃げようとするがすぐに男達に捕まってしまう。 「女だ!しかも、人間の…、若い女…。」 「おお。主が喜びそうな美しい容姿をしているな。もしや、白い花嫁に選ばれるかもしれぬ。」 「すぐに主の下へ…、」 「その必要はない。」 不意に男達を止める声が聞こえた。 「それは、俺の獲物だ。許可なく、勝手に触るな。」 「ディラン様!これは、失礼いたしました!」 現れたのはディランだった。
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