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「しかし、魔法は操れてもその数は人間と比べると少ない。魔法は人間の世界では禁忌とされているため我々は正体を隠して生きてきた。人間に見つかってしまう度に住む場所を変え、追いやられた先がこの森だった。我々は人間を近づけさせないためにこの森の姿を変えた。そして、噂を流し、人間を遠ざけた。それでも、好奇心と興味本位で森にやってくる人間はいる。…一族の存在を知られるわけにはいかない。一族を守る為に人間を森から出すわけにはいかなかった。だから、我々の手で処分した。」
「じゃあ、白い森に入った人間は…、もしかして…、」
「ああ。俺達が全員殺した。一人残らずな。森に入った人間は殺せ。それが一族の掟だった。」
「なら、あなたはその掟を破ってまで私を助けてくれたの?どうして…?」
「ただの気まぐれだ。俺だって、好きで人を殺しているわけではない。」
「母と妹は…、もう…、」
「俺はお前の母と妹には会っていない。が、俺以外の一族の奴らに見つかってしまったら…、気の毒だがもうこの世にはいないだろう。…すまない。」
「…いいえ。あなたは何も悪くないわ。」
リディアは痛む胸をそっと押さえた。
「それじゃあ…、あの白い魔女は一体誰なの?後、器って?」
「白い魔女は一族の長を指す名称だ。…器はその長の代わりとなる肉体が必要なんだ。若く、美しい女の身体がな。」
「あの魔女が口にしていたものは…、」
「…心臓だ。若い女のものだった。我々一族は魔法を操るだけじゃない。人食い一族でもある化け物だ。」
「人食い…!?」
「リディア。…俺が怖いか?」
驚くリディアにディランは近づいた。リディアは彼を見上げた。透き通るような湖の瞳…。今まで何度も彼は私を助けてくれた。リディアには彼が人を食らうなどおぞましい所業をする者には見えなかった。
「いいえ。怖くないわ。」
「そうか…。」
何処となくほっとした様子で彼は表情を和らげた。その時、ドアを叩く音がした。すぐに彼はリディアを衣装棚に隠した。
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