微熱の夜

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 「うーんと……僕たちが人間達をいっぱい連れて行っちゃったから、罰を受けたんでしょ?」  「そうだよ……村の女が女児を産んだ噂は瞬く間に広がり、多くの獣人達がこの地にやって来て、次々と娘達を(さら)っていった 」  「でも兄さま、罰って一体どんな罰を受けたの?」  するとエリアスは、小袋から輝く小石を取り出してハクヤに見せた。  「人間達は、術者に頼んで結界を張り巡らせたんだ 」  「けっか……い?」  「でも大丈夫、満煌石が僕達を(まも)ってくれる。だからお前も大切にして、どんな時も肌身離さず持っているんだよ……いいね?」  月明かりが照らす部屋に、ハクヤは静かに横たわっていた。その隣では、美しい人間の娘が眠っている。  握りしめていた満煌石を(かざ)すと、石は月の光を浴びて音もなく鈍い光を放った。しばらくの間その様子を眺めていた彼は、再びそれを手の中にしまうと隣にいる彼女を見つめた。  「やっと会えたね……瞳 」  艶やかな黒髪が、枕の上を波打つ夜の海のように広がっている。その一房を(すく)い上げると、そっと唇を押しあてた。彼女から漂う甘い花のような香りが、鼻腔をくすぐる。するとハクヤの背筋を、ゾクッと電流のような衝撃が駆け抜けた。  ーー駄目だ。今はまだ、その時じゃない……     
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