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今日は休日前の賑わい時に来たから、金を持った死体がごろごろしている。
普段はホームレスの死体ばかりで、金になるような死体は少ないのだ。
持ちきれないほどの財布を手にした頃、スーツを着た死体に遭遇した。
アキムの脳裏には「助けて!」と叫んでいた男の姿が浮かんだが、アキムは彼から財布だけでは飽きたらず、時計にスーツ、靴まで奪い取った。
その通りを抜けると、この地区一番の広場に出た。
バーが所狭しと軒を列ね、休日の夜となれば教会はライトアップされ、噴水も光輝く美しい場所だが、今は数えきれないほどの死体が転がり、それに餓えた子どもたちが我先にと群がっている。
みんな、各々の避難所を持っていて、霧が出た時そこへ避難する。
そして霧が消えると、みんな一斉に現れて、虚しく見殺しにされた人を、食い物とするのだ。
金目の物は全て奪われ、不要とされた物だけがそこに打ち捨てられる。
彼らを害虫と蔑んでいた連中は、最期その害虫に品定めされるのである。
ここは他のストリートより救いがある。
霧のおかげで、彼らはそこから這い上がれる。
アキムは“それ”に家族を奪われた。
仲間も友達も、少しずつ減っていった。
しかしアキムが、彼らのポケットに手を突っ込むのをやめることはない。
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