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霧
アキムは、今日も生き延びることができた。
なんとかもらえた洗車の仕事を日が暮れるまでこなして、やっと手にできたお金は一食分。
これで空腹を満たせるとレストランに足を運んだが、汚い子どもは問答無益で門前払いを受けた。
移動販売店のパン屋にも何も売ってもらえず、アキムは仕方なく、自分と同じように汚い子どもが売っているガムとくしゃくしゃになったサンドイッチを買った。
彼らが売っている物は大体が拾った物だが、それに文句をつける人などいない。
彼らのような人は、アキムのように正規の物が買えない人にとって、なくてはならない存在だ。
そして彼らも、そんなことでしか食にありつけない人たちだ。
そんな子どもたちが、この町にはたくさんいる。
親に育児放棄や虐待を受けて、たまらず家を飛び出した子や、親に労働を強要される子、そしてアキムのように、親もホームレスで帰る家がない子など、理由はさまざまだ。
彼らは夜になっても行くところはなく、道の隅に丸くなるしかない。
アキムは空腹が満たされず、先々のゴミ箱を漁った。
食べかけの骨付き肉。飲みかけのジュース。
人々の残り物が、アキムの命を繋ぐ。
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