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「アキム、大丈夫か?」  話しかけてきたのは、アキムより少し年上のダニイルだった。  両親が死んで、兄弟と分かれてしまったアキムを、仲間にいれてくれたのが彼だった。  ダニイルはストリートで暮らしている年月が長く、ここで生きるコツを教えてくれる。 「向こうのティーベって店なら、飯売ってくれるぜ。行ってみろよ」 「ほんと? ありがとうダニイル」  アキムはゴミ漁りをやめて、ティーベを目指した。  ストリートに住む子どもは、だいたいが仲間を作る。  物を売ってくれる店。仕事をくれる場所。人攫い。警察の動き。  そういった情報を共有できる仲間がいなければ、生き延びることができないからだ。  ストリートでの生活は、どこも過酷である。  金もなく、人からは疎まれ、その時生きることに精一杯で、何も希望がない。  しかしこの町には、他にはない“救い”があった。  アキムは、飲食店の多い通りを歩く。  休日を迎える今日は、すでに酔っぱらっている人も多く、町は人でごった返していた。  その横を、アキムは知らぬ顔で通りすぎる。  ふわりと、生ぬるい空気が鼻を掠めた。  アキムは立ち止まる。  匂いを嗅ぐ。  飲食店から流れ出る匂いでよくわからない。     
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