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アキムは崩れ落ちた。
ダニイルは霧に食われた。
アキムはダニイルの胸に拳を乗せ、泣いた。
間に合わなかった。
霧の中、アキムはひたすらに泣いた。
自分も死ぬかもしれない。
そんなことは考えられなかった。
いや、それすらもどうでもよくなっていたのかもしれない。
しかしそれでもその日、アキムは死ななかった。
気づけば、霧は薄くなっていた。
ダニイルから手を離し立ち上がると、ころんと音がした。
視線を落とすと、ダニイルのポケットから飴玉が転がった。
アキムはそれを手にし、包みを開け口へ放る。
ダニイルをその場に残し、アキムはふらふらと歩き出した。
休日を迎える夜だというのに、町は静まり返っていた。
家の電気も消え、出店も消え、道に出たテーブルや椅子もそのままに、飲食店も固く閉ざされていた。
人っ子一人歩いておらず、いるのは霧に食われた死体だけだった。
アキムは、ティーベの近くに転がった死体に手をかけた。
上着のポケット、内ポケット、パンツのポケット。
全てのポケットに手を突っ込み、出てきた金を全て自分のポケットに入れ直した。
そして次、その次と、死体を見つけるたびに同じ動作を繰り返す。
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