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そこまで言い、祐真は口を噤んだ。側にいた女子生徒が、独り言を言う祐真に、おかしな視線を向けたのだ。今はまだ登校のラッシュアワーだ。廊下にも大勢の生徒達がいる。おかしな素振りは見せない方がよかった。もっとも、その半数は、他には眼中にない男子生徒同士のカップルだったが。
祐真は、屋上へ行くことにした。生徒達の間を縫うようにして、屋上に続く階段を登る。
屋上に着き、誰もいないことを祈りながら、扉を開ける。朝の爽やかな風と共に、朝日が祐真を照らす。
屋上には誰もいなかった。朝っぱらからこんな場所に用があるのは、悪巧みを行う奴か、何か秘め事がある奴くらいだろう。
祐真は、可能な限り周りから死角になる場所を選び、リコに先ほどの質問の続きを行う。
「淫魔術ってなんだよ?」
制服越しに声が聞こえる。
「インキュバス、サキュバス等の『淫魔』固有の魔術さ」
「つまり?」
リコは言い切った。
「この状況の首謀者は、淫魔である可能性が高いってこと」
リコは、この高校の男子生徒が次々に同性愛へ覚醒していったことを、『感染型』の淫魔術のせいだと説明した。
『感染型』とは、その名の通り、人を媒介にして、次々と連鎖的に作用が広まっていくタイプの魔術らしい。
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