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一通り話が纏まったところで、祐真はリコに訊いた。
「だけど、その淫魔、なぜこんなおかしな現象を引き起こしたんだ? 何の目的が?」
困ったようなリコの声が聞こえる。
「さあね。捕まえて本人に聞くしかないね。そこは」
リコがそう言い終わった時だ。朝の始業を告げるチャイムが鳴り響いた。話に夢中で、つい長居してしまった。ここから教室までは結構長い。すぐに行かなければ。
祐真は急いで立ち上がり、屋上を出ようとする。
そこで、ふと疑問に感じたことをリコに聞いてみることにした。これから周りに人がいる環境に赴くのだ。おそらく、もうなかなか話しかけることができない。だから今聞こうと思った。
「リコは淫魔術、使えるの?」
一瞬だけ間が開き、リコは答える。
「僕は使えないよ」
「どうして? インキュバスだろ」
「そうだけど、使えないんだ」
「なぜ?」
「そんな淫魔もいるんだよ」
「そうなのか」
よくわからないが、リコがそう言う以上、そうなのだろう。そこはこちらが気にするようなことではなかった。むしろ淫魔術の説明を聞く限り、リコが使えないことは幸いだったのかもしれない。
祐真はそれ以上会話を交わすことなく、屋上を後にした。
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