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「うん、まあそうだね。俺はその気がないよ」
篠原は、気の強そうな目を細め、こちらの顔を覗き込んだ。
「それはどうして?」
そう訊かれ、祐真は困惑する。本来なら、朝、古里に襲われた時点で同性愛者になっているはずである。そこをリコに助けられたお陰で難を逃れたのだが、それを正直に話すわけにはいかない。まだ例の『ペナルティ』の危険は残っているのだ。
祐真は適当に誤魔化すことにした。
「俺もわからないよ。ただ男に興味が湧かないだけ」
「でも、このクラスで同性愛者になっていいないのは、羽月君くらいだよ。他の女子もおかしいって言ってる」
「どういうこと? 他の女子って?」
篠原は、こちらにぐっと身を寄せた。シャンプーの香りだろうか。良い匂いがする。
「彩香だよ。彩香が羽月君が同性愛にならないことを不思議がってた」
祐真は訝しがる。なぜ、そんなことにわざわざ疑問を持つのだろう。確かに、同性愛者ではない男は、極めてマイノリティーになってしまったが、それほど気になるものなのか。
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