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つまりは八方塞がりだということか。名前からは想像できないほど、淫魔術とはやっかいなものらしい。やりようによっては、国一つくらい滅ぼせるんじゃないのか。
徹夜をした時のように、頭が痛くなった。頭を抱えそうになる。
そこで、不意にリコの手がこちらに伸びた。そして、手を取ろうとする。
また何か誘惑をしてくるものだと祐真は身構えた。リコに文句を言おうと口を開きかける。だが、リコは小さく笑って説明をした。
「大丈夫だよ。感染者に触れられた淫魔術の痕跡を消すだけだから」
そう言いながらリコは祐真の右手を取り、冷えた手を温めるように、両手で優しく包んだ。
「はい、終わり」
数秒もなく、リコは祐真の手を名残惜しそうに離した。
「早いな」
祐真は、リコから触れられた右手を撫でながら訊く。
「うん。侵食が深くないからね」
脳裏に、古里から押さえ付けられた光景が蘇る。
「たったあれだけで、淫魔術は感染するんだな」
「そうだよ。なかなか強力な感染型だ。術者は相当強いよ。まあ、祐真に感染していた分は、古里だけじゃなく、星斗君や他の感染者からのものも含んでいたけどね」
リコの説明で、祐真の中にふと疑問が浮かぶ。古里や星斗には触られた記憶があったが、他の生徒達からはなかった。それなのに、そこからも感染していた。
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