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「例えば、感染者とすれ違う際に袖振り合っただけでも、触れられた人間は感染するものなのか?」
「そうだね。その程度なら、微細な量だから回数を重ねない限り発症まではいかないけど、感染したことには変わりはない。ウィルスのように、わずかな接触でも魔術を伝染させる。それが『感染型』の真骨頂だから」
「と言う事は、うちの高校は全員感染しているようなものなのか? 発症していないだけで、女子も含めて」
「その通りだよ祐真。感染型の淫魔術は時間経過で消失はするけど、あの高校みたいな状況なら、常に付着し続けるはずさ」
そこまで言ったリコは、唐突にハッとした表情を浮かべた。やがてロダンの彫刻のように、考え込む仕草をする。
一体、何があったのだろう。祐真は怪訝に思いながら、リコに問いかける。
「どうした?」
リコは祐真の質問に答えなかった。しばらくの間そのままだった。
やがて口を開く。
「祐真。ちょっと話がある」
リコは真剣な面持ちだった。普段、このような言葉を吐く時は、祐真の貞操を狙うアプローチが常だったが、今回のこれは違うと確実にわかった。本気で大切なことを伝えようとしているのだ。二ヶ月近く一緒に居るので、その程度は理解できる。
「何?」
祐真も真剣に答える。
リコは口を開いた。
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