召喚

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 朝食の匂いの原因はあれだ。『彼』があそこで料理をしているのだ。  祐真は、ベッドに腰掛けた。そして、部屋を見渡す。  部屋の右側にテレビ置かれてあり、その周りには、苦心して集めたアニメのフィギュアが並んでいる。その反対側には学習机。  そして中央に、折り畳み式の丸テーブルが置かれてあった。その上には、すでに二人分の箸が用意されている。  祐真は、それを確認すると、溜息をついた。それらは『彼』が用意したものだ。朝食を作ってくれるのはありがたいものの、はっきりと見て取れる好意がやっかいだった。自分はその気はないのに。  あまり『彼』とは顔を合わせたくないが、いかんせん、今は尿意を催している。トイレは、キッチン横だ。つまり、この部屋を出て、『彼』の側を通らなければ辿り着けない。  祐真は、仕方なく、立ち上がった。このままだと漏らしてしまう。そうなると、『彼』が喜んで片付けようとするだろう。それは嫌だった。それに、これから学校だ。モタモタしていては遅刻する。  祐真が歩き出そうとした時だ。気配を感じたのか、ガラス戸が唐突に開いた。そして、『彼』が顔を覗かせる。  「おはよう! 祐真!」     
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