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しかも食材の費用は、こいつ持ち。どうやって金銭を獲得しているか知らないが、経済面でも非常に助かっている。両親からの仕送りでいつもギリギリだからだ。とは言っても、まだ食費が浮いて一ヶ月程度なので、充分に貯まってはいないが。
祐真は『彼』と丸テーブルを挟んで、朝食をとる。銀鮭を箸でほぐしながら、目の前の人物の顔を伺った。
『彼』の名前はリコ=シュバルベルク=ノヴェチェシャドリコフ=スタヌスラヴェヴィッチ。本当はもっと長いが、覚えているのはここまでだ。名前からは、何となくロシア人のようなイメージを持つものの、もちろん違う。そもそも、人間ではない。
祐真は、リコの容貌を確認する。
リコは、この世の人間とは思えないほどの美貌を持っていた。精錬された彫刻のような端整な顔に、氷のように澄んだ目。そして、白い肌と美しい銀髪。銀髪はナチュラルマッシュ風に整えてあった。
まるで、ルーペンズの絵画から抜け出てきたようなリコの容姿端麗さは、リコと出会ってからこれまでつぶさに見ている。自分もそこは認めていた。だからと言って、彼の事あるごとに行ってくる誘惑に従うことなど考えてもいないし、これから先、ありえないだろう。自分もリコも男なのだ。『自分は』男には興味はなく、恋愛対象はあくまで女だ。
リコと目が合う。リコはニッコリと微笑み、銀鮭の切り身を箸で摘んで、こちらに差し出してくる。
「はい、祐真、あーんして」
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