召喚

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 祐真は、学校終わりに、勉強で必要な資料を探すため、地元にある図書館へと赴いていた。最初は学校の図書室で探したが、借り出し済みだったので、ここまで足を運んだのだ。  古い図書館だった。建物自体も大きく、蔵書量も相当ある。大抵の書物は見付かりそうだと思った。ましてや求めているのは、高校二年の演習問題である。すぐに済ませられるはずだった。  祐真は、閑散とした図書館で、目的のものを探す。時刻は夕方に差しかかっていた。他にも自分のような学校帰りの学生がいると思っていたが、驚くほど人は少なかった。  照明も古いせいか薄暗く、ホラー映画の洋館にでも入ったかのような、不気味な雰囲気が漂っていた。  目当ての数学の演習問題集は、すぐに見付かった。参考書関連の棚に収納されており、最近誰も引き出した形跡はない。  祐真は、その問題集を取り、手に持った。カウンターに行こうと足を動かしたその時、妙なものが祐真の目に止まった。  背表紙が赤く装丁された、ハードカバーほどの本。それが、参考書関連の棚に一冊だけ不自然に収納されていた。ジャンル的に似つかわしくなく、変に浮いて見えた。  目を近付けてみる。背表紙に金箔でタイトルが書かれてあった。  『サキュバスを召喚する方法』  図書館の職員が、児童書かホラー小説を間違えてここに入れ込んだのだろうか。祐真はそう思った。     
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