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二〇一二年、冬。
「こんばんはー…あれ」
ドアを開けると、ベッドの上で毛布にくるまって息を潜めるヒサクニがいた。
「いないじゃん。トイレかな。ヒサー」
こたつの脇に鞄を置き、ウロウロしてみる。
「おかしいなあ、」
そう言いながら、毛布の脇腹と思しきところに人差し指を突き込んでみる。ブスッ。
「グフ!」
「……」
「…ッ………」
「ホアタタタタタタ」
ブスブスブスブスブスブス。
「ウッヒヒ!!っあーー!!!ああはぁあああ」
神の宿る指は毛布の脇腹を執拗に捉え、毛布は悶えながらベッドからまろび落ちる。
僕はポケットから出したお菓子の封を破りながら座布団を引き寄せてこたつへ入った。
「チョコボール一緒に食べよ。ドリル出して、ヒサ」
「ヒィ、ヒィイ…」
「はよせえやオッサン」
「オ、オッサンン!!??ヒ、ヒィッヒ!ウヒャハハッハハハ」
中学生の笑いのツボは無限大で、こうなったら何を言っても魂に響くことを知っている。
息ができずに震えている毛布の耳元に魔法の言葉を囁いた。
「ウンコ」
毛布がヒサクニの涙と涎と鼻水だらけになった時、彼の母が心配そうな顔をして部屋のドアをそっと開けた。
家具がいくつか倒れたと思ったそうだ。
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