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第4話 切り捨てる覚悟
2人はまず聖の住んでいるマンションに向かうことにした。
マンションの近くまで辿り着くと聖は足を止めた。
「ここから先は僕1人で行く……」
「でも…」
心配する翔に聖は笑いながら言った。
「2人で一緒に住むんでしょ?」
「あぁ…絶対2人で住もう!!」
そう翔が言うと聖は背を向けて言った。
「15分…」
「えっ?」
聖は少し翔の方に振り返り言った。
「15分してここに戻らなかったら僕を…助けにきて…」
そういい残し聖は自分のマンションに向かって行った。
聖がマンションの入口にいくといつもとは違う風景が広がっていた。
「あれ?誰もいない…」
聖は翔といる間仕事を休んでいたおかげか聖を取り巻くα狙いの人達はいなくなっていた。
「本当はこんなに静かだったんだ…」
そういいながら入口に入るとそこには聖の母親がいた。
「おかえり!!」
母親はそう言いながら手を出した。
「おかえり?あなたが待っていたのは僕なんかじゃないだろ?そんな思ってもない言葉言わないでくれ!!」
そういいながら母親が出した手を払うと聖はすぐに左頬を叩かれた。
(バンッ!)
すると母親は人相が変わったように怒った。
「てめぇに拒否権なんてねぇーんだよ!!早く金よこせよ!!」
そう言いながら詰めよる母親に聖は言った。
「僕はあなたの財布なんかじゃない…僕は僕なんだよ!!蒼山聖なんだよ!!」
その聖の言葉を無視するかのように母親はポケットからナイフを出した。
「金…よこせよ…よこさねーなら…てめぇなんて息子って思ったことねーんだよ!!小さい時からなんでも出来て気持ち悪かったんだよ!!……だから稼ぐようになって思ったんだよ…やっとこいつの使い道がわかった…ってな…だから早く!!金をよこせよ!!!」
その叫び声は翔の所にも聞こえていた。
「…!!」
翔がマンションの方を見ると今にも襲われそうなナイフを向けられている聖がいた。
「聖!!」
聖は怖くなりナイフに怯えながら1歩ずつ後ろに下がった。
「そんなこと…ずっと気づいてた…それでも母親として…家族として…見て見ぬふりをしてきたんだよ…」
母親は狂ったかのように聖にナイフを振り下ろした。
聖はその瞬間目をつぶったが痛みが来ないことに気がつき目を開くとそこには翔がいた。
「翔!!」
翔の腕には母親が振り下ろしたと思われるナイフが刺さっていた。
「何邪魔してるんだよ!!あんた!!」
すると、翔は言った。
「俺の大切な人には傷なんかつけさせられないからな…」
「大切な人…?ハハハ…笑ける!!そんな金庫みたいなやつに人間としての意味を見出すとはねー」
翔は自分の手に刺さったナイフを抜いて言った。
「お金が欲しいなら俺が差し上げますよ、但し、今後聖に近づかないで頂けますか?」
母親は腕組みをしながら言った。
「見ず知らずの奴に言われる筋合いはないね…だって私はこの金づるの母親だから!!死ぬまで私の為に稼いで貰うんだよ!!そうでないとこいつの生きてる意味すら無くなるだろ?」
翔は怒りながら言った。
「あなたはクソ野郎なだけで聖の母親と名乗る資格なんてない!!聖を守るのが俺の役目だからあなたに渡したりしない!!」
そう言いながら翔は聖を担いでその場所から逃げた。
「逃げるぞ!」
「えっ…あぁ…うん!わかった!」
母親は聖が連れていかれたのに怒りを爆発させた。
「クソっ!私の金庫がぁぁ!!」
母親が地団駄を踏みながら逃げた方を見るとそこには1枚の名刺が落ちていた。
「名刺?」
母親が拾いあげて名刺をみるとそこには翔の名前が書かれていた。
「なるほど……いい金づるじゃねーか……」
そう言って母親は聖を追いかけることなくマンションの中へと戻った。
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