第5話 自由を求めて

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翔と聖は車を借りてビルが立ち並ぶ街から緑溢れる街並みが車内から見え始めた。 「都内から抜けたのか…」 聖はそう呟くと翔は言った。 「これから向かうのはもっと緑溢れる場所なんだけどな」 翔はいいながら聖の方を向いて微笑みかけた。 「そんなに緑ばっかりの所だったら誰にも邪魔されないなぁ…」 聖はそう言うと嬉しくなり両手を天井に向かって伸ばし笑顔になった。 その時の2人の表情は長年縛られたものから解放されたかのような清々しい表情をしていた。 車に乗ってから1時間ぐらい経過した頃高速のインターチェンジに到着した。 「ここからまだ後2~3時間ほど走るからここで昼ご飯でも食べるか…」 翔は聖に言った。 「そうだなぁーお腹も減ったしなんか食べよう」 そう言ってフードコートに入ってご飯を選んでテーブルに座った。 すると隣から声が聞こえてきた。 「この政治家さんは誰やったっけなぁ…この人はいい人なんやけどなぁ~」 「この人やろ?めっちゃいい人やんなぁー政策もしっかりしてるしこの人に総理になって欲しいんやけどなぁ~名前なんやったっけ?」 関西弁の2人組の男がテレビを見ながら話していた。 テレビに写っていたのは政治家でコメンテーターでも有名な水鳥 秀我(みずどりしゅうが) だった。 すると翔はいきなりその2人組に近寄って言った。 「あの…」 2人組はびっくりした顔で言った。 「な…なんですか…急に…」 すると翔は2人組に言った。 「あの政治家の…あの政治家の!!!どこがいいやつなんですか!!!」 翔はそう言った2人組の食事中の机に思いっ切り両手をついた。 (バン!!!) 聖は慌てて詰め寄る翔を止めにいった。 「翔!いきなりどうしたんだよ!いきなりすみませんでした」 聖は2人組に翔の代わりに謝って自分の食事中の席に戻り翔を落ち着かしてから話を聞くことにした。 「まずは落ち着いて…」 そう言って水を翔に渡すと一気に飲み干した。 「翔…いきなりどうしたんだよ…」 聖が言うと翔は答えた。 「オレの…」 翔の小声すぎて聞こえにくかったから改めて聞き直した。 「もう1度…いい?」 聖に言われ翔は言いにくそうに言った。 「あんまり知られたくないし教えてもいけないけど…あの政治家はオレの兄だ…」 聖はその言葉に固まった。 「えっ…それって兄弟ってこと…?」 「あぁ……」 聖は翔がいい家に住んでいる理由がやっとわかった。 ただ聖には疑問が残っていた。 「でも苗字が……」 すると、翔は言った。 「それは兄が新しく自分で財閥を作ったからだろ…」 「財閥ってそんな簡単にできるの?!」 「出来ないな…α(アルファ)の才能を持ち元々財閥の息子であれば別じゃないか?」 「そうなんだ…」 「兄弟…なんて言えたもんじゃないけど…親だって…周りは皆…」 翔はそう聖に言ってグッと拳を握った。 聖はそんな翔に言った。 「家族と何があろうと翔は翔だから僕の気持ちは変わらない…だからいいんじゃないか?」 その言葉にまた1つ翔の肩がふと軽くなった気がした……。 聖はお店に呼ばれたので2人分の料理を取りに行った。 「はい!翔持って来たよ」 翔に見せる聖の笑顔は何よりも輝いていて翔は少しにっこりして今ある幸せを噛み締めた。
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