千変万化の君

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千変万化の君

「授賞おめでとう」 僕は彼女にそう言って欲しかった。クラス全員の一部として言われる口先だけの言葉じゃなくて、文章で伝えられる社交辞令でもなくて、彼女に直接会って目を見て言って欲しかった。 僕はとある絵画コンクールで全国入賞を果たした。しかもうちの地域からこのような成績を出すということは初の快挙だという。僕は学校のみならず地域で一躍時の人となった。 だけどそんなのはどうでもいい。誰に何を言われようが僕にはなにも心に響かない。ただ一人を除いて。それが松崎莉子だ。  僕と彼女の関係は単純明確。僕が告白し、彼女が振ったという余りにありふれた、気まずい関係。告白したのは11月。あれからもう1ヶ月近くたった。告白が失敗した後も彼女との関係は続いている。彼女の優しさがそうさせてくれてるのだろう。 どうして彼女のことを好きになったのかと聞かれれば、家の方向が同じでよく帰り道が一緒で、彼女のことを知る機会が多かったからと答えることになると思う。じわじわと彼女のことで頭の中が占められるようになっていった。     
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