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「高内家の家庭事情は?」
「事故を起こした交差点から百メートルと離れてないところに一軒家を構えてるわ。敬之は証券会社に勤めるサラリーマン。楓はガソリンスタンドをいくつも経営している会社で経理の仕事をしているの。結婚したのは五年前。あ、ちなみに楓はあたしと同い年ね。つまり家にはふたりきりで住んでたわけ。夫婦仲は、あまりよくなかったみたい」
「どうしてわかるの?」
「近所の聞き込みよ。ときどき外にも聞こえるくらい大声で喧嘩をしてたらしいの」
「どんな理由で喧嘩してたの?」
「そこまでは近所のひとも知らなかったみたいだけど、でも夫婦の間にトラブルがあったってことは間違いないわね」
「そうか……ところで敬之さんは昨夜、どこに行ってたんだろうね?」
「それも今のところ不明なの。昨夜は午後九時すぎに会社を出て、それからの足取りはつかめてないのよ。楓の話だと『きっと、女のところだと思います』ってことなんだけど……」
「特定の女性がいたの?」
「楓は、いたと思っているようね。ただ確証はないみたい。敬之に問い質したことはあったようなんだけど、言い逃れされて決定的な言質は取れなかったんだって」
「ふうん……じゃあ、喧嘩の原因もそこんとこにありそうだね。ますます楓さんにとっては不利になってくるな。夫に愛人がいて、喧嘩が絶えなかった。ついカッとなって夫を殴り、首を絞めて殺してしまった」
「一番考えられるシナリオよね」
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