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「もし、自分がその立場だったら、晶子さんならどうする?」
「どうするって、たいちゃんを殺したとしたら?」
「うん、まあ、そうと仮定してさ」
「一緒に死ぬ」
晶子は即答した。
「たいちゃんの死体を抱きしめたまま、睡眠薬千錠飲んで死んでやる」
「いや、そうじゃなくて……まさかだけど、今の冗談でしょ?」
「冗談って、言ってほしい?」
晶子は悪戯っぽい眼つきで夫を見つめる。
「でも、たいちゃんが浮気したってわかったら、本気でそうするかもよ」
「うーん……」
新太郎は複雑な表情で、頬を掻いた。
「ちょっと話題がずれちゃったから、軌道修正しようよ。心中する気はなくて、自分は助かりたいと思ったとき、犯人はどうすると思う?」
「死体を処理するわね」
晶子は真顔に戻った。
「あたしたちもそれは、真っ先に考えたわ。とりあえず家には置いておけないから、どこかに運ぼうとするでしょ。死体をトランクに詰めてね。だから実家に行くつもりだったって言ってるけど、どういう理由で行こうとしていたのかは、はっきりしないのよ。思いついて急に行きたくなったと言ってるだけで。だから実家云々っていうのは嘘だ、という見方が警察内では強いわね。楓は土地鑑のある実家方面のどこかに死体を埋めるつもりでいたんじゃないかしら。それが突然の事故で計画が頓挫するどころか、死体まで見つかってしまったというわけ」
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