不幸は突然に

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タイムカードの打刻を済ませ 「お疲れ様でした、また明日」 控えめに低い位置で手を振り くるりと向きを変えると 駅までの道を早足で歩く 明日は高校の卒業式 本当なら大学へ進学するはずだった “諦めろ”と父から理由を聞かされたのは一年前のこと 代々教職の家系で育ち 揺らぐこと無く高校の教師になった父 ごく平凡な家庭で育ったと思っていたのに 現実はギャンブル依存症の父のせいで 夜逃げをする寸前まで追い込まれていた 更には裏の世界の博打に手を出し 父はある日突然姿を消した 程なくして郵送で届いた離婚届は 借金から逃れる為に 母の手によってその日のうちに役所へと提出された 既に退職金まで取り立てに消え 財布に1円のお金も無くなったと母から聞かされた時の衝撃は言葉では言い表せない 母が連帯保証人の銀行ローンだけは逃れようもなく重くのしかかり 手に入れたマイホームは 簡単に差し押さえられた 親戚身内は手のひらを返したように背中を向け 母娘二人抜け出せない蟻地獄へ落されたようだった
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