1人が本棚に入れています
本棚に追加
強い陽射しが夏と共に過ぎ、秋の風が金木犀の香りを運んできた。
図書館でその人と初めて出会ってから半年が過ぎようとしていた。
「ここに来る前に空を見て思ったんだけど」
「何?」
私はスケッチブックを出すと、今見た秋の空のイメージを鉛筆で描く。
濃い灰色、白色、薄い灰色、水色、青色。
180度の空のパノラマに、そのすべての色があることを伝えた。
「そうだね。秋の空はとっても不安定だからね、女心と秋の空」
「えー!男心と秋の空じゃないの?ずっとそう思っていたんだけど」
女性は一途、男性は浮気ものと脳にインプットされていたのだ。
「男のほうが、案外この人と決めたら貫くのかもしれないね」
彼はそう言った後に軽い咳をした。
最近乾いた咳をするのが気になっていた。
「君にお願いしたいことがあるんだ」
「なに?」
「今度僕の妹が20歳になるんだ。それで何か贈り物をと思っているんだけど、よくわからなくて。一緒に選んでくれないかなと思って」
今度の日曜日の10時にここで待っていると言うと、また乾いた咳をひとつした。
最初のコメントを投稿しよう!