パステルカラーはいつも白

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パステルカラーはいつも白

時折立ち寄る図書館。 いつも決まった席に座わる。この席がなぜか落ち着く。 辺りを見回すと人はパラパラとしかいない。 おもむろにリュックから、色鉛筆を出す。 小学校低学年の頃の光景が頭をよぎる。 「ねえ、お母さん24色の色鉛筆買って」 「そんなに色が本当に必要なの?12色でいいでしょ」 「いや、いや!24色がいいの」 中高大と一貫の学校へ通う私は、美術を専攻していたわけではない。 小さな頃から絵を描くのが好きで、いつも色鉛筆と画用紙を持ち歩いている。 少し年上だが、隣の席に大学生らしい男性が座ると、色鉛筆を見て言った。 「君は24色の色鉛筆を使いこなせてる?」 自分が好きな色の傾向は決まっている。だから色鉛筆の減りかたに差がある。 ケースの中の色鉛筆の長さを見れば歴然だ。 「白色は必要ないと思ってる?」とその人が聞く。 当たっている! 白い画用紙に書くのに、なぜ白色が必要なのかと敬遠して反発のようなものさえ感じていた。 「やっぱり、図星らしいね」 その人は自分のカバンから色鉛筆を出し机に置いた。開いたケースの中の色鉛筆が大体同じくらいに減っている。
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