第五章 恐竜の惑星

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「これじゃあ、数メートル先どころか、一メートル先だって分かんねえ。メリッサ、惑星探査車は使えないのか」  後方を歩くゲイスが言ってきた。 「これだけ大木が密集しいては無理よ。歩くしかない」  メリッサはそう言うと、ジャケットから赤外線スコープを取り出して目に翳した。 「すごいわ、ここかしこに小動物の姿が見える」 「ちぇっ、メリッサの奴。オレ達にも教えてくれたって・・・」  メリッサのその歓声に感化されたのか、ゲイスも赤外線スコープで周囲を見渡した。 「ヤッホー。ここは生物の楽園だ」  その様子を見ていたサキも、ジャケットに手を突っ込んで赤外線スコープを取り出した。サキは取り出した赤外線スコープを目の位置に持って来ようとしていた。メリッサやゲイスが味わっている生物の楽園とやらを自らも体感するために。  サキの赤外線スコープを握った手に一瞬の衝撃が走った。サキがその手を見ると、既に赤外線スコープはなかった。落したのかと思ったサキが目線を下に向けると、襟巻トカゲのような小動物が赤外線スコープを口に銜えて走り去る姿が目に留まった。 「こらー、ドロボー、返せ。あたしのだぞー」  サキはその小動物の後を追いかけて走り出した。それに気づいたタケルは直ぐに「サキ、サキ、どこに行くんだ早く戻って来い」と何度か呼んだが、全く返事はなかった。 「しかたない、サキをほっとけない。皆でサキの後を追うしかない」
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