208人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
「恐竜の足の速さには、かなわないよ」
ゲイスは辺りをキョロキョロと見回しながら、どこかいい隠れ場所がないかと探しながら走った。
「あー」
足元をあまり見なかったせいか、ゲイスは地面にポッカリとできた穴に落ちた。
「ゲイス、ゲイス、大丈夫か」
ゲイスの叫び声を聞いたタケルが叫んだ。
「大丈夫だ。深さは五メートルぐらいだ。それより、この穴に隠れよう。この穴の大きさなら、あの巨体では入れない」
タケルはゲイスの声を便りにゲイスが落ちた穴を見つけた。手に持ったライトで中を照らすと、穴の底にゲイスが居た。
「よーし、皆、この穴に隠れよう」
タケルが皆を手招きし、皆はゲイスが見つけた穴に入った。
タケル達が穴の底で息を潜めていると、「ズシン。ズシン。ズシン」と恐竜の足音が迫って来た。その足音は次第に大きくなり、そして止まった。
「諦めたか・・・」
ゲイスがそう言った時だった。
「ガオーッ」
耳を劈くような唸り声が頭上で鳴り響いた。
「真上にいるぞ」
モーガンが声を荒げた。
恐竜はその叫び声を合図に、タケル達の穴に顔を突っ込んで来た。恐竜が穴に突っ込んだ鼻先から、生暖かい湿った空気が穴の中に一気に流れ込んだ。
「クッセー」
ゲイスのその言葉で、タケル達は一斉に鼻を撮んだ。
しばらくすると、その生暖かい空気に変わって、清々しい空気が流れ込んで来た。
最初のコメントを投稿しよう!