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「行ったみたいだな」
タケルは穴の底から上を見上げた。
「どんなもんだい。この穴の直径じゃ、然しもの大恐竜も手が出せねえ」
ゲイスは得意げに自画自賛していた。
「ところで、ゲイス」
メリッサがゲイスに話し掛けた。
「なんだい、メリッサ。命の恩人のオレに感謝のチューでもしたいってわけか」
「どうやって、ここから出るつもりだ」
メリッサは穴の壁を手で撫でながら、ゲイスに不信な顔を向けた。
「どうやってって、こうやって、登るのさ」
ゲイスは意気揚々と穴をよじ登ろうとして、直ぐに断念した。
両手両足を広げて登るには、穴の直径は僅かに届かない程度に広く、穴の壁面をよじ登るには、壁面の壁にはおうとつが無さ過ぎる。さらに悪いことに、落ちた時はそうでもないと思っていた穴の深さが、下から見上げると想像以上の高さに変わっていた。
「石灰岩みたいね。これじゃ滑って登れないわ」
手の平を穴の壁面に付けていたサキの言葉が止めを刺した。
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