第五章 恐竜の惑星

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 自分自身のその声が眠りを覚ましたのか、早朝の冷え込みが眠りを覚ましたのか、当のゲイス自身にさえも判断が付かなかった。わかっていることは、この状態のままでは寝ていられないという事だけだった。  床に手の平を乗せると、凍りついたような床の冷たさが体の芯まで伝わって来た。ゲイスは反射的に床から手を離した。不用意に熱いものに触れた時のように。 「お宝の山に寝るのはいいが、こう寒くちゃかなわねえや」 ゲイスは両腕で自身の両肩を押さえると、「ガチガチ」と震えていた。 「ちょっと待てよ、確かこのスーツは『人体の表皮に必要な体温、水分、酸素を自動調整する機能を備えている』って言っていたよな。それなのになぜ・・・」  ゲイスはスーツのあちこちを手で触って、スーツが本当に機能しているかを確認していた。 「あれ、これは何だ」  ゲイスが腰に手を触れた時、何か衣服の洗濯用の注意書きタグのような小さな布が、スーツから食み出ているのに気が付いた。そのタグには『基準体温+-25』と表記されていた。 「『基準体温+-25』ってどういうことだ・・・」  ゲイスは首を傾げたが、直ぐにある着想が頭に浮かんだ。 「もしかして、基準体温が人の標準体温で、その前後の二十五度の範囲ってことか。人の平均体温が三十六度とすると、上限が六十一度、下限が十一度。つまり、このスーツが体温調整出来る範囲は、外気温が十一度~六十一度ってことか。なるほどね」  ゲイスは謎が解けたことに自己満足していた。しかし、それはまた同時に、新たな謎をゲイスに持ちかけた。 「でも、なんで上限は六十一度の暑さに耐えられるのに、下限は十一度までなのだ。地球の外気でも0度はぐらいは当たり前だろ。あっそうか、寒さは着込めば保てるが、暑さは裸になるしかないもんな。裸になるってことは、このスーツは必要ない。奴ら、うまく考えやがったな。それにしても寒いや」
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