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「まあ、ここの辺りでいいだろ」
ゲイスはそう言うと、神殿の壁に小便を引っかけた。ゲイスの体内から放出されたゲイスの小便は、寒さのせいか大量の湯気を辺り一面に沸き上がらせた。それはゲイスの一部であったその液体が、ゲイスとの別れを惜しんでいるかのようにも思えた。
「ああ、さっぱりした」
ゲイスは目的のために足元まで下ろしたスーツを、着直そうとして屈んだ。
「あれー」
ゲイスは自分が壁にした筈の大量の小便が、神殿の壁と床の隙間に吸い込まれるように消えて行くのに気が付いた。
「もしかして・・・」
ゲイスの頭にある考えが浮かんだ。
「おーい、皆、直ぐこっちに来てくれ」
ゲイスは神殿の隅から大声で叫んだ。
その声は神殿の壁で反響され、こだまのように神殿中に響き渡った。こだまは否応なしにクルー達を、安らかな眠りから呼び起こし、また過酷な現実の世界へと引き戻した。
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