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「ここに水をこぼしたのだが、水がこの神殿の壁と床の間に吸い込まれるように流れて行った」
ゲイスは神殿の壁と床の隙間を指さした。
「何かありそうだな。サキ、ライトで隙間を照らしていてくれ」
タケルは両手を床につけ、腹ばいになって、その隙間を覗いた。
「サキ、すまない。もっと、ライトを近づけてくれ」
サキは四つん這いになると、片手を床について、体を支えるようにしてライトを隙間に翳した。サキの鼻先が床から数センチまで接近した。
「あれー。何か、におう・・・」
サキは鼻に届いた不快な異臭を感じて、思わず立ち上がって鼻を撮んだ。
「これ水じゃなくて、ゲイスの・・・」
サキはその匂いの正体に気付いたものの、それ以上はまだうら若きサキには『乙女の禁句』。それ以上は口に出せなかった。
「どうした・・・」
タケルは既に頬を床に着けていた。
「これは水じゃなくて、ゲイスの小便だ」
モーガンは、そんなサキを気遣って代わりに答えた。
「ゲイス、それを先に言えよ」
タケルは立ち上がると、呆れ顔で頬についたゲイスの小便、いやゲイスのエキスを、ハンカチで拭い去った。それはサキも同様だった。二人はゲイスのエキスが、自分達の体を蝕むのではないかと危惧してでもいるかのように、熱心に拭き取っていた。
「まさかね・・・」
二人のその様子を見ていたモーガンが、運試しに神殿の壁を片手で「グイ」と押してみた。神殿の壁はいとも簡単に口を開けた。早く入って来いよと誘うように。
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