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「やめてくれ、撃たないでくれ。助けてくれ」
男は両手を胸元近くにあげて、泣き喚いた。男は丸腰だった。メリッサはゆっくりと銃を下ろすと、床に投げ捨てた。『自分の役割は終わった』とでも言いたげに。
「おい、この野郎。ふざけた真似しやがって」
自分達の圧倒的勝利を確信したゲイスは、男に近付くと、足で思い切り男を蹴り倒した。「ドスン」という音を立てて、男は床に倒れた。
「これで、オメエはオレ達の捕虜だ」
ゲイスはジャケットから携帯ワイヤーロープを取り出すと、床に倒れた男の両手をワイヤーロープで後ろ手に縛った。
「メリッサ、ありがとう。よくやった。でも・・・」
タケルはメッリサの逆転劇に感謝と賞賛を送った。
でも、『あそこまでやる必要はなかったのではないか』と言いかけて、途中で止めた。
「でも、何・・・」
その言葉の裏の意味を察したのか、メリッサの鷹のように鋭い眼光がタケルの目に向けられた。
「いや、何でもない」
「勝敗を決めるのは一瞬、その一瞬に感情を挟む者に勝利はない」
メリッサはそれだけをタケルに告げると、クルリと身を反転させて出口の方に歩いて行った。あたかもタケルに背を向けるように。
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