第一章 旅立ちの時

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第一章 旅立ちの時

 西暦2103年、地球は既に人口爆発で資源を食い尽くし、瀕死の状態にあった。各国政府はこの事態に歯止めを掛けるため、あらゆる手段を講じてはいたが、未だに抜本的な解決策を見出すことは出来なかった。人々はさらに餓え、少ない資源の維持独占を図る富裕層と貧困層の二極化は一触即発の危機に面していた。  そこは、街はずれの貧困層居住区にある古ぼけた工場。外見はさながら二十一世紀初頭、現在に比較して物が豊富であった時に乱立した倉庫を思わせた。  二十一世紀初頭、その時代はまだ現在のような流通オンデマンドシステム、需要量に応じた生産流通システムが確立されておらず、商品が末端消費者の手に届くまでの生産流通の要所ごと、すなわち、原料業者、組み立て業者、卸問屋、小売店ごとに商品を倉庫に保持していた。でも、現在では世界レベルでの流通オンデマンドシステムが確立され、倉庫という存在自身が無用の長物と化していた。もちろん、倉庫というダブついた商品を抱えるだけの資源を地球が持ち合わせる余裕さえ、現在には許されていなかったのだが。タケル達の日々の糧を支える職場は、この不要となった倉庫を改造したものであった。
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