白い雲と蜘蛛

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白い雲を背景に巣作りをしている蜘蛛はまるで空を歩いているようだった。 うちの家の裏には古くて広い下屋がある そのすぐ近くには銀杏の木が一本だけあった 古い屋根の下屋は野晒しの物置の様な扱いになっていて 泥を被った脚立や使わなくなった下駄箱が置いてあり 屋根の隅には蜂の巣の残骸や蜘蛛の巣があった 「今回はデカいのが居るな」 そんな古い下屋でも洗濯物を干すのには重宝した 家には乾燥機もあるが天気が良い休みの日はもっぱら外で干している 下屋に行くと屋根の隅に蜘蛛の巣が出来ていて そこには全長7cmはありそうな蜘蛛が居た 「まあいいか」 同じ下屋の下でも物干し竿からは遠く通路の邪魔にもならないので放っておいた 一週間が経ち、再び休みの日が来た 「またデカくなったか?」 下屋に行くと先週と同じ場所に蜘蛛は居た そしてまた一週間が経ち、下屋に行くと 蜘蛛の巣は無くなっていた 「ああ、風強かったものなあ」 昨日は一日中強風の日だった 庭の銀杏の葉もほとんど昨日の風で散っていた 「まあしょうがないか」 本来の目的である洗濯物を干し終わり 空を見上げる そこには全長8cmはありそうな蜘蛛が居た どうやら銀杏の枝と屋根の間に巣を作るつもりの様だ 天気予報は晴れだったが今の時間はまだ空を白い雲が覆っていた 目を凝らすと枝と屋根の間に蜘蛛の糸が見えた 白い雲を背景に巣作りをしている蜘蛛はまるで空を歩いているようだった。
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