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芝犬か、秋田犬か、ただの雑種か。生憎、犬の種類には造詣が深くなく、分からない。日本犬だということだけが分かり、最初に思い浮かべた通り、犬はロールパンのような毛色をしていた。
縁側に佇んだまま犬と見合って数秒、居間に設置した炬燵の上で、けたたましい音が鳴った。電話である。犬から意識を逸らしてスマートフォンを手に取ると、徳間は四苦八苦しながら着信に答えた。スマートフォンたる文明の利器に、徳間は一向に慣れる兆しがない。ーー新しいもの好きの妻は、メールに日記と大分楽しんでいたようだったが……。
「あ、親父? 無事に片付いたか?」
電話の相手は徳間の息子だった。日曜日の午後で、家族と共に居るのだろう。後ろで孫の「おじいちゃん? 僕も話したい~」と賑やかな声がする。来年、小学二年生になる孫を、徳間は目に入れても痛くないほど可愛がっている。
「問題ないよ。荷物は片付いた。あとは段ボールを捨てるだけさ」
「何か手伝うことないか?」
「大丈夫、大丈夫」
徳間は苦笑いを浮かべる。
よく出来た息子に育ってくれた。そして良い嫁を娶ってくれた。息子夫婦は、老いた徳間を何かにつけて気にかけてくれる。だが、引っ越しの際の一悶着があって、徳間は少し気が引けていた。
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