お伽噺

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お伽噺

 この国には「闇」がある。それを手にすると、なんでも願いが叶うのだという、不思議な力が。誰も見たことも触れたこともない。  しかし、それは確かに存在するのだ。  元は、一本の剣だった。黒い剣。  1人の男が、友を救おうと、その剣を手に入れた。  しかし、強い力は暴走。友を救うどころか、この世界を滅ぼしかねなかった。  男の友は、願った。強く、強く。 ーー この人を、救ってくれ ーー  その時ーーーー……。  俺は、膝の上とすぐ隣の温かさに気がついて、呼んでいた本を閉じ、サイドテーブルに置いた。 「まったく……。この物語は、眠り薬か?」  毎日、この物語を呼んでいる。なのに、一度も結末にたどり着いたことがない。  今日も、結局、読んでとせがんできた子どもたちは、寝息を立てている。 「気持ちよさげに寝やがって」  双子であるこの2人が、物語の結末を知る日は来るのだろうか。 「えへへ」 「ふふ」  夢の中の2人が、同時に笑う。  夢の中で、物語の続きでも見ているのだろうか。俺は、2人の頭をひと撫でし、ひざ掛けを引き寄せた。  この国には、「闇」がある。  手に入れると、なんでも願いが叶うのだという、不思議な力が。                               END and continued
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